肉離れが原因のギックリ腰への整体。

「ギックリ腰が良くならない人は、どんな理由?」を前回しました。

ギックリ腰になる原因はいくつかあります。

・筋肉の損傷。
・椎間板の損傷。
・抹消神経の損傷。
・圧迫骨折や剥離骨折。

今回は「筋肉の損傷によるギックリ腰」について説明します。

個人差がある。

ギックリ腰への整体で、施術効果は個人差があります。

ギックリ腰、腰椎伸展の改善(女性)
ギックリ腰、腰椎伸展の改善(男性)
ギックリ腰、腰椎伸展の改善(若い男性)

矯正前後の写真はコチラ

肉離れによるギックリ腰

肉離れは、筋線維や筋膜の損傷や断裂を言います。

病院のMRI検査によって、軽度、中度、重度と程度が分類できます。

MRI検査以外では、障害度の分類はできませんので、整体ではその判断はできません。

ただ、MRI検査が普及する前は、主観によって判断されていました。

主観による肉離れの障害度

筋膜や筋線維の断裂で軽度~重度まであり、痛みの強さはそれに比例します。

軽度:筋力低下や可動域制限が痛みの程度によって起きるが患部の筋肉を動かすことはできる。

中度:筋力低下や可動域制限が強い。

重度:筋肉が切断している為、その筋肉が働く関節動作ができない。

肉離れしやすい筋肉。

肉離れになりやすい筋肉の種類として羽状筋が知られています。

腰の部位では短羽状筋の腰方形筋がそれにあたります。

また、他の筋肉も肉離れすることがあります。

筋肉の傷め方。

肉離れは、以下の状態にある時に損傷しやすい傾向にあります。

・筋疲労の蓄積。
・伸張性収縮。
・関連部位の歪みや筋疲労。

また、これらが重ると軽度の筋肉への負荷でも損傷する事があります。

筋疲労の蓄積

筋疲労が溜まると筋線維は、収縮して伸びづらくなり硬くなります。

このような状態で筋肉が伸ばされると損傷することがあります。

伸張性収縮

伸張性収縮とは、いくつかある筋線維の収縮過程のひとつです。

筋肉が伸ばされた状態で収縮する事を伸張性収縮といいます。

他には、「短縮性筋収縮」と「等長性筋収縮」があります。

詳しくは、「動き方で筋肉の負荷は変わる」に書いています。

この伸張性収縮は3つの収縮過程で最も筋肉に負荷をかけ、損傷リスクも高いです。

例えば、腰の筋肉に伸張性収縮が働く動作は、重い荷物を持った状態から床に下ろす動きです。(図1参照)

腰に負担場大きい伸張性収縮の動作。
図1:腰部の伸張性収縮

この動作時に筋肉は収縮しながら伸ばされ、ギックリ腰になりやすい動作です。

補足:その他の収縮過程

短縮性収縮は、腰の筋肉では、荷物を持ち上げる際の動作。

等長性収縮は、腰の筋肉では荷物を持ち上げて静止している状態。

関連部位の歪みや筋疲労。

関連部位の歪みや筋疲労には、以下のことが関係しています。

・骨格の歪み
・筋連結やアナトミートレイン

また、肉離れを起こすと患部の筋肉だけではなく、その周囲の筋肉も硬くなります。

肉離れした筋肉は、その修復過程で硬くなります。

周囲の筋肉は、患部の筋肉に動きなないように保護しようと収縮し硬くなります。

その患部と繋がりがある筋肉が硬くなれば、患部に圧迫や牽引を加えてしまい、それが痛みだけでなく治りにくさにも影響します。

ただし、これとは別に患部の修復過程に応じた適度な強さの牽引や圧迫は回復を早めることもできます。

骨格の歪み。

一例ですが、腰痛を起こしている人は、ハムストリングスの筋力低下や拘縮がおきている事が多いです。

その影響により、図2のような筋疲労や筋力低下や骨格の歪みが見られます。

ハムストリングス拘縮による筋疲労や筋力低下。
図2:ハムスト拘縮による筋疲労。

腰と背中が後湾すると上半身の重心が前にズレ、体が前に倒れそうになる為、それを引き戻そうと腰部の筋肉が疲労します。

また、このタイプとは別に腰部の筋肉が収縮し腰部が過前弯を起こす場合もあります。

筋連結やアナトミートレインによる影響。

筋連結やアナトミートレインは、関節動作を行う際に筋肉の効率を高めるために協調して働く筋肉のことです。

肉離れした筋肉と強調する筋肉に疲労やコリがあると、それを補おうと他の筋肉の負担が大きくなります。

その負担が大きくなる筋肉が肉離れを起こしやすくなります。

例えば、肉離れを起こしやすい筋肉で多裂筋と腰方形筋の筋連結は、以下のものがあります。

多裂筋の筋連結。

多裂筋(図3参照)は、最長筋、腸肋筋、大殿筋、回旋筋との筋連結があります。

多裂筋と筋連結にある筋肉。
図3:多裂筋の筋連結。

これらの最長筋、腸肋筋、大殿筋、回旋筋に筋疲労や、コリがあり、筋力や協調性のバランスが崩れると多裂筋の疲労が増し、肉離れを起こしやすくなります。

腰方形筋の筋連結。

腰方形筋の筋連結は、大殿筋、横隔膜、腸肋筋、最長筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋があります。

これらの筋肉の疲労やコリは、先ほど述べたようなことが起こります。

ギックリ腰をおこしやすい筋肉。

ギックリ腰を起こしやすい筋肉には、腰方形筋と多裂筋があります。

腰方形筋は羽状筋であること、多裂筋は役割が多様であることが原因と思われます。

多裂筋の肉離れによるギックリ腰。

多裂筋は、図4のように背骨に付着する筋肉です。

多裂筋のトリガーポイントによる放散痛位置
図4:多裂筋

その多裂筋は、背骨を中心に両側にあります。

多裂筋の起始、停止

筋付着部の起始は、棘突起。

筋付着部の停止は、腰部の乳様突起や仙骨、骨盤の靭帯(後仙腸靱帯)です。(図5参照)

多裂筋の起始停止。
図5:多裂筋の付着部(クリニカルマッサージより)

多裂筋の働き

多裂筋の働きは、背骨(上半身)の伸展、回旋、側屈があります。

両側の筋肉が働くと上半身が背屈し、片側のみ働きで側屈と回旋が起こります。

例えば、左の多裂筋が収縮すると上半身の左側屈と左回旋が起こります。

多裂筋損傷による痛み

多裂筋損傷による痛みは、収縮痛と伸張痛があります。

左の多裂筋を傷めた場合には、以下の上半身の動作痛が起こります。

・背屈で腰の左に収縮痛。
・屈曲(前屈)で腰の左に伸張痛。
・左側屈と左回旋共に左に収縮痛。
・右側屈と右伸展共に左に伸張痛。

つまり、上半身の全ての動作で左側に痛みが生じます。

整体での徒手検査では、損傷程度にもよりますが、圧痛や熱感、筋肉のこわばりがあります。

多裂筋の損傷例。

筋肉の負荷が強くなる動作は伸張性収縮で、図6のような動作です。

台の上に置かれた荷物を左から右に下ろすと左の多裂筋に伸張性収縮がおきます。

ギックリ腰での多裂筋を損傷しやすい動作。
図6:多裂筋損傷によるギックリ腰。

また、このような動作を以下の要素での絡みが多いほど、損傷リスクは高まります。

・反復して何度も行う。
・荷物が重い。
・早く動かす。
・猫背で行う。
・普段から腰が疲労気味で筋肉が硬い。

くしゃみによるギックリ腰。

くしゃみでもギックリ腰になることがあり、その理由は二通りあります。

・筋疲労の蓄積。
・腰椎ヘルニア。

筋疲労の蓄積

個人的にもクシャミのしすぎで肋間筋を痛めた事があり、咳をする度に激痛が走ることが数日も続いた経験があります。

クシャミによるギックリ腰の場合には、肋間筋ではなく腰方形筋(図7参照)です。

腰方形筋のトリガーポイントによる放散痛位置
図7:腰方形筋
腰方形筋の起始停止

腰方形筋の起始は、骨盤の腸骨稜。

停止は、腰椎横突起や胸椎12肋骨。

腰方形筋の働き

この筋肉の働きは、以下のものがあります。

・片側の収縮で上半身の側屈。
・両側の収縮で上半身の伸展(背屈)。
・呼吸補助筋の働きで、息を吐く際に働く。

腰方形筋は呼吸の補助筋としての働きがあり、息を吐く際にも使用されています。

風邪などで何度もクシャミをすると筋疲労が生じます。

また、以下の事が重なるとクシャミでのギックリ腰のリスクは高くなります。

クシャミでギックリ腰しやすいタイプ。

・強いクシャミをする。
・猫背姿勢を日頃している。
・腹圧が弱い。

強いクシャミであるほど筋肉の収縮が強くなります。

ギックリ腰にならない為には、咳を抑えると良いです。

腰方形筋は背屈筋ですので、猫背姿勢を日常生活でしていると、この筋肉に疲労溜まりがちです。

腹圧が弱い人は背筋の疲労が強くなります。

例えば、胡坐(あぐら)の姿勢(図8)で腰が背部に反り、背筋が疲労します。

それに加え腹圧の低下があるとさらに背筋は疲労します。

胡坐による猫背姿勢
図8:あぐら姿勢

腹圧についてはコチラで詳しく説明しています。

腰椎椎間板ヘルニア

今回は、筋肉の損傷によるギックリ腰の説明をしていますので、簡単に説明します。

腰椎椎間板ヘルニアがあっても痛みがでない事もあり、咳が原因で椎間板ヘルニアによる腰痛が始まる事があります。

椎間板ヘルニアは、椎間板が脊髄神経がある側へ飛び出したものです。(図9右参照)

椎間板ヘルニアによる脊髄神経や神経根の圧迫。
図9:椎間板ヘルニア

※椎間板ヘルニアの生成について、コチラで書いています。

クシャミによる椎間板ヘルニアによる痛みは、以下の2つが影響して神経を傷めることが原因です。

・椎間板の突出を強める。
・髄液の圧力が脊髄神経を圧迫。

椎間板の突出を強める。

椎間板ヘルニアは、脊柱管側への突出で脊髄神経や抹消神経の神経根へ圧迫を加えます。

クシャミをする際には腰を屈曲させますが、その姿勢はさらに椎間板の突出を強めます。

椎間板の突出が強まれば神経への圧迫は強くなり、クシャミを繰り返すことでそれが増強し痛みがでることがあります。

髄液の圧力が脊髄神経を圧迫する

クシャミをすると脊柱管内の髄液への圧力は強くなります。(図10参照)

クシャミによる腰椎ヘルニア。
図10:くしゃみから腰椎ヘルニア

髄液は、脊髄神経の通り路(脊柱管)を満たしている液体です。

髄液の中に脊髄神経が通っており、髄液への圧力は脊髄神経にも加わります。

また、飛びでた椎間板への圧も加わり、くしゃみから椎間板ヘルニアによる痛みが始まることがあります。

肉離れによるギックリ腰への整体。

ギックリ腰は損傷直後から時間が経過するにつれて痛みが強くなる傾向にあります。

そして、受傷した日よりも翌日、2日目、3日目と痛みが増していことが多いです。

整体は、施術後に痛みを改善させるだけではなく、これを和らげます。

ですが、整体を受けたからといって、患部の傷が即座に修復される訳ではありません。

その痛みは施術後も残り、損傷度が軽ければ翌日の痛みは弱いですが、損傷が強い程翌日以降の痛みもそれに比例し残ります。

そして、急性期でのギックリ腰への整体の主な役割は、間接的な痛みへの施術と防御性収縮の予防となります。

詳しくは、「ギックリ腰が良くならない人は、どんな理由?」で説明しています。

施術方法

損傷した筋肉への整体は、肉離れを起こした筋肉への牽引や圧迫を弱める施術を行ない、痛みを改善させていきます。

その施術法や施術の強度は、以下の要素で異なります。

・損傷してからの期間。
・損傷度。
・患部の施術と関連部位への施術。
・お客様の痛みの感じ方。

当院の施術方針は、無痛整体ではありません。

「癒し」<「施術効果」

を目的に施術を行ないます。

ですが、テレビで見る足裏マッサージのような激痛を我慢して頂くような施術ではありません。

お客様の体質によって痛みの閾値が低下している場合、痛みを感じやすいタイプの人もおります。

この場合は、お客様に痛みの程度を確認しながら施術強度を決めています。

回復度に応じて施術は異なる。

患部への施術は、傷めたばかりである急性期とそれが経過した後の回復期で施術方法は異なります。

基本的に患部への施術強度は、回復期より急性期が弱い刺激での施術になります。

そして、痛みが和らぐにつれて施術できる整体法は増えていきます。

患部への整体

患部への施術は、傷めたばかりの時期と回復してきた後での整体法は異なります。

急性期での患部への施術

急性期における肉離れを起こした患部への整体は、基本的に刺激の少ない施術を行ないます。

なぜ刺激を少なくする必要があるのか?

傷めたばかりの患部は、筋線維や筋膜が傷ついています。

その傷ついている組織に強い刺激を入れると炎症が強くなり、痛みが強くなります。

急性期での患部への施術は、刺激の少ない施術しか行えません。

当院では、その際に微振動や螺旋の刺激を加えて痛みを和らげる施術を行なっています。

また、お客様自身でも痛み止めや抗炎症薬の服用や塗布、アイシングも有効です。

回復期での患部への施術

急性期を過ぎ、回復期での患部への施術は、以下を組み合わせた施術を患部に行ないます。

・圧迫(押圧)
・患部のストレッチ
カイロプラクティック矯正

施術の強度は、患部の回復度やお客様の反応をみながら整体法を選択します。

患部の修復が進むにつれて、行なえる整体法も増え、より患部の筋肉の牽引や圧迫を緩める事が可能になります。

関連部位への整体。

痛みは、肉離れを起こした患部自体の痛みと関連部位の痛みがあり、それぞれ痛みを和らげる施術法は異なります。

ギックリ腰への整体に限った話ではありませんが、症状の原因は患部だけではありません。

最初の方で説明したように(図2参照)患部と協調して動作する筋肉や骨格の歪みが関係し、患部に筋疲労がたまりやすく、それによって肉離れを起こしている事もあります。

ハムストリングス拘縮による筋疲労や筋力低下。
図2:ハムスト拘縮による筋疲労。

つまり、関連部位への施術は、痛みの改善と再発リスクの低減にも繋がります。

例:多裂筋肉離れへの施術

例えば、ギックリ腰で傷めることのある多裂筋で説明します。

多裂筋は、以下の筋連結(違う筋肉との繋がり)があります。(図11参照)

・最長筋(筋膜)、腸肋筋(筋膜)、大殿筋(筋膜)、棘筋(腱)、回旋筋(腱)

多裂筋と筋連結にある最長筋(筋膜)、腸肋筋(筋膜)、大殿筋(筋膜)、棘筋(腱)、回旋筋(腱)
図11:多裂筋と筋連結のある筋肉。

これらの筋肉が硬いと多裂筋への牽引や圧迫が生じ、痛みが発生します。

最長筋の筋疲労やコリが多裂筋を圧迫。

図12は、腰椎L2での筋肉の位置で、多裂筋は最長筋の隣にあります。

腰部筋肉の位置(L2付近断面)
図12:L2での腰部筋肉。

患部である多裂筋に刺激が入らないように周囲の筋肉が疲労(防御性収縮)し、最長筋が疲労してコリになると最長筋の筋線維は太くなり拡張します。

その拡張した最長筋は隣接する多裂筋へ圧迫を加えてしまい、圧迫による関連痛が生じます。(図13参照)

筋肉のコリが周囲の筋肉を圧迫する。
図13:コリによる隣接する筋肉への圧迫。

最長筋への施術は、多裂筋と最長筋は隣接している事もあり、最長筋を押圧すると多裂筋への圧迫も強めます。

急性期での施術は患部は多裂筋であっても、最長筋への施術は刺激の弱い整体法を用います。

また、多裂筋の損傷が軽度であった場合、お客様の反応を確認しながら刺激の強さを調整します。

回復期では、回復程度に応じて整体法を増やしていきますが、お客様の反応を確認しながらの整体になります。

この場合の整体は、多圧法、カイロプラクティック、ストレッチなどを行ないます。

大殿筋の疲労やコリが多裂筋を牽引。

多裂筋と筋連結にある大殿筋は股関節の動作にかかわり、役割は股関節の伸展や外転、内転、外旋です。

つまり、歩いて股関節が伸展する度に損傷度が強くあるほど痛みは強くなります。

また、防御性収縮により大殿筋にコリが生じると患部の多裂筋に牽引が加わり、牽引痛が生じます。(図14参照)

筋連結にある筋肉は牽引される。
図14:筋連結による筋牽引。

患部ではない大殿筋への急性期での施術は、患部の多裂筋への影響も少ないのでお客様の反応をみながら通常通りに近い施術を行ないます。

筋連結のある大殿筋を緩めることで多裂筋への牽引を弱め、動作痛の改善に繋がります。

回復期での大殿筋への施術も同様に通常通りの施術を行ないます。

次回は

今回は、肉離れによるギックリ腰について書きました。

ギックリ腰の痛みの原因は、肉離れだけでなく、以下のものもあります。

・椎間板の損傷。
・抹消神経の損傷。
・圧迫骨折や剥離骨折。

次回は、椎間板の損傷について説明します。

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