生活習慣の不良などにより背骨は歪みますが、骨の構造や靭帯の制限によって、一部を除き背骨は前方へはズレず、後方へズレるのが基本です。
背骨は腰、胸、頸とそれぞれ5、12、7個ありますが、例外としてC1の前方変位があります。
※変位とは、位置がズレること。
また、骨は後方変位だけではなく、回旋、側屈の歪みも伴うことがあります。
基本のズレ方
生活習慣から起こる背骨の後方変位の主な原因は、床や椅子に座る際に腰を曲げて座る時間が長く、それを長年繰り返していることが原因です。
腰の湾曲
正常な腰の湾曲は、図1のようにお腹の方に向けて凹(へこ)む形(前湾)をしています。
ですが、腰を後ろに曲げる姿勢を何度も繰り返すと、図2のような癖が次第についてしまいます。
このように背骨が屈曲する歪みの原因には
・腰椎が後方にズレる。
・椎間板の形が崩れ損傷する。
・筋肉の拘縮やバランス不良。
・圧迫骨折。
があります。
椎間板が損傷する理由はコチラに書いてあります。
後方変位
背骨が後ろにズレることを後方変位といいます。
カイロプラクティックの表記では(P)となります。
P=posterior=後部
正常な腰椎の並び方は、図3(左)のように前湾しています。
※腰椎とは、腰の骨のことをいいます。
ですが、腰を曲げる姿勢を長年とっていると図3(右)L4腰椎のように後方変位することがあります。
※図3では、L4が後方変位していますが、変位する骨は人によって異なります。
腰を曲げ続けると後方変位する理由
正常な状態では、腰の骨は前湾しています。
ですが、図4(右)のように背中を後ろに曲げる姿勢をすると椎間板の前はつぶされます。
それとは逆に椎間板の後ろは開いた状態になります。
このような形は、椎骨が後ろに押し出される力が加わる為に後方へズレてしまうのです。
通常、背骨には多くの筋肉やいくつかの強力な靭帯が働いて椎骨が簡単にはズレないようになっています。
ですが長い間、雫(しずく)が岩の同じ所に当たり、岩に穴を開けることがあるように、背中を曲げる時間が長いほど骨はズレてしまいます。
このようなズレは、その位置で骨が固定されてしまい、すぐには元に戻らない。
または、ずっと戻らなくなることもある為、生活習慣の改善はとても大切です。
骨がズレた位置から元の位置に戻らないことを、カイロプラクティックではサブラクセーションと言います。
サブラクセーションについては、コチラをお読みください。
前方変位
前方変位は、椎骨が前方にズレることをいいます。
カイロプラクティックでの表記は(A)です。
A=ANTERIOR=前部
話が逸脱しますが、腰部が前湾を長期間とっていても、椎骨が前にズレることはありません。
これは、骨の形状がそうさせています。
※ただしC1(首の一番上の骨)は後方変位せず前方変位をします。
ただし、椎骨が後方変位した際にその上に載っている椎骨は見かけ上、前方に変位しているように見えます。
椎骨が前方にズレない理由
図5は、椎骨の斜位図になります。
椎骨の骨と骨が重なる関節は、上関節突起と下関節突起になります。
椎骨が前方変位しないのは、図6,7のように下にある椎骨の下関節突起が上にある椎骨の上関節突起と接触している為です。
ただし、外傷などの衝撃により下関節突起を上関節突起を乗り越えてしまい脱臼することがあります。
その際は、脊柱内の脊髄神経を激しく損傷することになります。
変位による脊柱管狭窄
背骨の骨(椎体)を頭の方から覗き込むと図8のように脊髄神経が通る脊柱管が見えます。
背骨は、このような椎体が積み重なり、図3のような背骨を形成します。
図9は背骨を側面から見た簡易図です。
椎骨が後方変位すると、図9(右)のように重なる椎骨内にある脊柱管の位置がズレてしまいます。
そうなると上下椎骨とでなる脊柱管との重なりがズレ(黄色)て脊柱管は細くなります。
また、この脊柱管狭窄は椎間板ヘルニアと連動して起こり、脊髄神経をさらに圧迫しやすくなります。
脊柱管は、脳と抹消器官との信号をやりとりする連絡路です。
脊髄神経の圧迫は、痛みやしびれだけでなく内臓機能の低下を招くこともあります。
脊髄神経圧迫による多用な症状はコチラ。
側屈や回旋変位
背骨の歪みは、後方変位だけではありません。
側屈や回旋変位を伴うこともあり、このような変位は側弯を生じさせます。
側屈変位の表記
カイロプラクティックでの側屈変位の表記は、(RS・LS)となります。
S=Superior=上方
例えば、図10の下部胸椎(T12)は、その下にある腰椎(L1)に対して
椎体の右(Right)が上方(S)に変位している為、T12RSという表記になります。
※変位を診る場合、背部から見た歪みが基準になります。
回旋変位の表記
カイロプラクティックでの回旋変位の表記は、(RP・LP)となります。
R=RIGHT=右
L=LEFT=左
P=Posterior=後方
例えば、図11は頭方から椎骨を見た図になりますが、下の椎体に対して上の椎体が回旋変位をしています。
椎体の右側(R)が後方(P)に変位しているためにRPという表記になります。
※変位を診る場合、背部から見た歪みが基準になります。
ここでは単純に側屈変位と回旋変位の表記を説明していますが、実査に骨格の歪みを確認すると側屈や回旋変位が単独で起こることはまれです。
複合変位
実際には回旋と側屈が組み合わさるRPSやLPSという歪みになる事が多いです。
また、このような歪みに加えて椎体が後方へズレる後方変位も同時に起こることがあります。
このような歪みが組み合わさり骨格は歪み側弯が生じています。
当院のビフォー・アフターはコチラ。
また、側弯症は背骨の中にある椎間板が後方にでる椎間板ヘルニアを併発させやすくなります。
椎間板ヘルニアは、お尻や脚への痛みやしびれが出るなどの症状です。
このような側弯が生じる理由は、単純ではなくいくつの理由が考えられます。
側弯症についてはコチラに書いてあります。
側弯が生じる原因
背骨の側弯が生じる理由には、いくつかの要因があり、
・先天性の体質により生じるもの。
・体の使い方から生じる場合。
・外傷によるもの。
またはその両方が重なって生じます。
基本的に側弯症は、椎体の変形によるものでなければ代償作用によって創られます。
代償作用
人は、平衡バランスをとるたに出来るだけ目線を水平に保とうという働きがあります。
その為に目線が水平位置からずれるとそれを正そうとして体を歪めて代償を行います。
例:左右の脚長差がある場合。
例えば、脚の長さに違いがある場合。
下図(中央)のように左脚が短いと体は左に傾きます。
このまま生活すると平衡バランスを崩し気持ち悪くなるために目線を水平に保とうとします。
その為に下図では、胸椎と腰椎の移行部を変位させ、さらに胸椎と頸椎の移行部を変位させ目線を平衡しています。
この例では、背骨を曲げて代償作用が起っていますが、実際には代償を行う部位は人それぞれです。
左脚が短いので、それを補うために右膝を曲げれば脚は短くなり、それで代償を行うかもしれません。
その他に
・頸椎と頭部の移行部を変位させる。
・骨盤変位。
・頭蓋骨を歪める。
・左足関節を底屈させる。
・右膝の外反を強める。
・左膝の内反を強める。
・右股関節の内転を強める。
・左股関節の外転を強める。
などが考えられます。
背骨の側弯が生じる原因
側弯症ができる例は、脚長差だけではありません。
以下の原因が重複して起こります。
先天性によるもの
※先天性とは、生まれつきという意味。
・骨格アライメントの不良。
※アライメントとは、角度や位置のことをいいます。
生まれつきの脚の長さの違いもその一つです。
脚といっても脛骨や大腿骨、足があり、それぞれ変形
また、椎体の変形
体の使い方から生じるもの。
・髄核の側方への移動。
・骨盤の歪み
・骨格アライメント(骨盤の歪み、脚の歪みによる脚長差、圧迫骨折による椎体の変形、髄核の側方変位)
・筋肉の拘縮やバランス不良。
外傷によるもの
外傷によるものは、事故やケガで生じたもので体の使い方や先天性によるものと同じですので省きます。
このような歪みに対して徒手療法を行って歪みを整え症状の改善を目指して行っています。
ですが、骨の変形、改善しずらい生活環境、生活習慣の不良がある為に改善が見込める部分と見込めない部分があります。