椎間板損傷

腰痛、肩こり

椎間板

背骨の骨は、腰、胸、頸とそれぞれ5個、12個、7個あり、椎骨と呼ばれています。

その背骨の間に椎間板は挟まり、椎骨と椎間板は連結しています。

椎間板の主な役割は、脊柱に加わる衝撃を和らげることです。

しかし、加齢により薄くなる傾向にあり、クッション性が低下します。

また、背骨に挟まる椎間板の総長は脊柱全長の4分の1程度あります

そのことから、椎間板が薄くなればや身長の低下が起ります。

椎間板(図:ムーア臨床解剖学より) 

その円板の厚さは、それぞれ異なり頚部と腰部では厚く、胸部では薄くなっています。

その為に円板が厚い頚と腰では、薄い胸と比べて屈曲の可動域が大きくなります。

椎間板の構成

構成は、軟骨終板、髄核、線維輪からなります。

下の図は、腰椎と椎間板の断面です。

図:標準整形外科学より NP:髄核 AF:線維輪(線維軟骨組織)
図:標準整形外科学より NP:髄核 AF:線維輪(線維軟骨)

髄核

髄核の通常位置は、椎間板のほぼ中央かやや後方にあります。

構成は、水分に富むゼリー状の軟らかい組織ですが、自己体積の9倍の水分を吸収する能力を持つ為に膨張圧が働き硬くなります。

硬くなることで椎間板内での軸の役割と垂直方向の負荷を支えています。

髄核の体積は椎間板内体積の40%~50%程度あります。

人の体内に留める水分は、年をとると減少していきますが、それに伴い椎間板の水分も減少し、椎間板損傷やヘルニアのリスクは高くなります。

線維輪

線維輪は、髄核を包んでいる部分をいいます。

また、下図のように髄核を取り囲むように円形の層板となっていて、各層板は膠原綿維がラセン状に走っています。

椎間板:図(ムーア臨床解剖学より)

また、隣在する層板の線維は、互いに直交しているため衝撃に強くなります。

そして、回転運動時の張力ストレスを分担します。

構成は、主に線維性コラーゲンできており60~70%が水分となっています。

軟骨終板

軟骨終板は厚さ1~2mmの軟骨層で,椎体の上下を覆っています。

構成は、椎体側は硝子軟骨で、椎間板側は線維軟骨です。

椎間板(髄核と線維輪)の栄養は、この軟骨終板を介して拡散しています。

椎間板の変化

椎間板の後部では、線維輪は比較的に薄い事と後述する姿勢不良により後方が損傷しやすくなています。

線維輪が破壊され髄核が後方に移動すると、椎間板が後方に腫れて椎間板ヘルニアとなります。

椎間板ヘルニアは,脊柱の可動性の大きい部と比較的小さい部との境目で多発しやすい。

それは第5~7頸椎間、第4~5腰椎間、腰椎と仙骨間です。

椎間板の損傷

椎間板の損傷は、日常生活における立位や座位において上半身の重みによる圧力や動作時でのストレスにより起こります。

日常生活では、重力の影響以外に前屈や後屈、体をひねる動作によりさらに負荷が加わります。

そして椎間板の中にある髄核は、通常であれば椎間板の中心付近にありますが、日頃の姿勢不良によって背骨が後ろに曲がると髄核は後方への圧力が強くなります。

下右図のような、頭が体の中心より前にある姿勢では、頭の重みで体は前に倒れようとします。

ですが、前に倒させないために腰を後ろに曲げバランスをとることがあります。

腰を後ろに曲げる姿勢を長時間行うと、右下図のように椎間板の前方が押しつぶされる形になり、椎間板の中の髄核は後方に圧が加わります。

このような動作を何度も繰り返していくと下図のように椎間板内の髄核が移動し線維輪を破壊することがあります。

図:標準整形外科学より

そしてその破壊が繰り返され椎間板が劣化すると、椎間板は上半身の重みに耐えられなくなり、下図のように椎間板の軽薄化が進みます。

図:標準整形外科学より
図:標準整形外科学より

姿勢や動作による椎間板の圧力変化

下の図は、立位での椎間板の圧力を100とした場合の相対負荷です。

座っている時の方が立位より椎間板に負荷がかかっていることが意外です。

座りながら前屈するとその負荷は最大になります。

つまり、この姿勢で腰が痛くなれば椎間板の損傷による痛みの可能性があります。

図:腰痛の診断と治療より

下の図は動作による椎間板への圧力変化です。

咳やトイレで気張ると痛みがでる方は、腰椎ヘルニアの可能性が考えられます。

図:腰痛の診断と治療より

下の図は、姿勢と動作による椎間板への圧力変化です。

腰痛の人は、腹筋や体幹の筋肉を鍛えて腹圧を高めることが推奨されますが、一般的な腹筋が推奨されない理由は、椎間板への圧力が強くなる為です。

椎間板に負荷をかけずに、腹圧を高める方法には、ドローイングという方法があります。

また、ウォーキングも有効です。

図:腰痛の診断と治療より

椎間板の修復

椎間板には、血管がほとんどなく一度破壊されると元の正常な状態へ戻ることはありません。

また、軽度のヘルニアは、痛みがでない場合があります。

そして飛び出たヘルニアは、体内で浸食作用によりなくなることもありますが、椎間板は薄くなります。

ヘルニアに対しての整体での施術効果が見込みは、軽度のヘルニアまでです。

整体を受けたからと言って、損傷した椎間板が元に戻ることもありません。

強く出過ぎたヘルニアは、手術した方が早いです。

お客様の中には手術を極端に嫌う方もおり、症状悪化の予防で整体を行っている方もしますが、手術が大嫌いでなければ、手術を薦めます。

ただ、腰や下半身への強い痛みやしびれがあってもヘルニアが原因でないことがあり、手術の結果がよくないこともあります。

ヘルニアの側には、脊髄神経や神経根があり、手術で損傷すると痛いだけでは済まないかもしれません。

腕のよい医師でも100%うまくいくわけではなく、手術はリスクも覚悟の上です。

そうなる前に姿勢や腹圧を高める筋力を保つ、また日頃からの整体でのケアは大切です。

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