椎間板損傷によるギックリ腰への整体

※ギックリ腰記事

ギックリ腰になる原因は、筋挫傷だけではなく、以下の原因でも発症します。

・筋肉の損傷。
・椎間板の損傷。
・神経の牽引や圧迫。
・圧迫骨折や剥離骨折。

ギックリ腰の記事は、以下の記事もお読みください。

記事:ギックリ腰への整体について
記事:肉離れによるギックリ腰
記事:椎間板損傷によるギックリ腰
記事:神経の圧迫や牽引によるギックリ腰
記事:骨折によるギックリ腰

椎間板損傷によるギックリ腰。

椎間板が損傷する原因は、以下のものがあります。

①急激な椎間板への過負荷。
②経年による椎間板への負荷の蓄積。

椎間板とは

椎間板は、背骨の骨と骨の間にある線維軟骨を言います。(図1参照)

図:背骨と椎間板
図1:背骨と椎間板。

役割は、主に以下の3つ。

・支柱としての働き。
・背骨の可動域を大きくする。
・脳への衝撃を和らげる。

椎間板の水分は7~8割ほどあり、ゲル状となっています。

ゲルとは、流動性のない個体とされ、食材のコンニャク(水分率90%程度)もそうです。

図:線維輪の破壊
写真:まえさとより引用。

椎間板は、コチラで詳しく説明しています。

椎間板の損傷。

椎間板は、線維輪が重なった構造をしており、ある程度の負荷は耐えられるような構造になっていますが、線維輪が破壊される事があります。(図2参照)

図:線維輪の破壊
図2:線維輪の破壊(標準整形外科学より)

腰椎椎間板ヘルニアは、線維輪の破壊が進行した結果に起こる病名です。

椎間板は、神経がない、または少ないと言われています。

痛みは椎間板の損傷によるものではなく、損傷に伴う周囲の炎症による痛みと考えられています。

①急激な過負荷による損傷。

椎間板は、どのような姿勢であっても負荷がかかり、その負荷は姿勢や動きで変化します。

椎間板への負荷は立位を100%とした場合、以下の変化があります。

・仰向け寝(仰臥位):25%
・横向き寝(側臥位):75%
・立位:100%
・前傾:150%
・前傾で荷物を持つ:220%
・姿勢よく椅子に座る:150%
・前傾して椅子に座る:185%
・前傾で椅子に座り荷物を持つ:275%

特に体幹の屈曲(前屈)で椎間板の負荷は強くなります。

そして、以下の状況が加わると、さらに椎間板への負荷は増します。

・急な姿勢の変化。
・高重量な荷物を持つ。
・ジャンプ前と着地時。
・体幹部の片側のコリ。
・骨格の歪み。
・体幹を屈曲させる筋肉のコリ。

椎間板の損傷はスポーツや交通事故だけではなく、これらが複合すると損傷しやすくなります。

体幹部の片側のコリ

体幹部の片側にコリがあると骨格に歪みが生じます。

椎間板は、背骨に挟まれており、筋肉は体の中心から左右同じように存在しています。

例えば、多裂筋(図3)ですが、背骨を挟み両側にあります。

図:多裂筋筋
図3:多裂筋

多裂筋の役割は、体幹の背屈(伸展)、側屈、回旋です。

この筋肉の片側だけにコリ(筋収縮)が生じれば、側屈や回旋の骨格の歪みが生じます。

※背骨の骨格の歪みは、筋肉のコリ以外にも骨の変形や椎間板内の髄核の移動でも作られます。

図4は、背骨(椎骨)の側屈と回旋による椎間板の負荷を表現した図です。

図:側屈と回旋による椎間板への圧力
図4:側屈と回旋による椎間板への圧力。

側屈を行うと椎間板は片側が押しつぶされ、髄核は側屈とは逆に移動し、それによる圧力が線維輪にかかります。

回旋を行なえば、椎間板の線維輪に張力が働きます。

また、側屈を行う時には、同時に回旋も加わるようになっています。

例えば、左側屈を行なえば、右回旋も加わります。

この自動回旋は、書籍:カパンティの関節の生理学によれば、上下椎骨の横突起間に付着する横靭帯と髄核の移動によって起こるようです。

背骨に回旋や側屈の歪みがあれば、普段から椎間板に負荷が加算され、その分損傷するリスクが高まります。

また、そこに椎間板への負荷が強くなる動作を行なえば、さらに損傷リスクは高くなります。

例:左側屈動作による椎間板への負荷

・左の椎間板が押しつぶされる。
・髄核の右への移動により線維輪の右側に横からの圧力が加わる。
・回旋による影響で線維輪には張力(線維輪の牽引)が生じる。

体幹の屈曲や伸展を起こす歪み

体幹の側屈や回旋と同じように体幹の屈曲や伸展がおきる骨格の歪みでも椎間板への負荷が強くなります。(下図参照)

図:屈伸による髄核の移動。
図5:屈伸による髄核の移動。

体幹の伸展(背屈)では、線維輪の後方が押しつぶされ、髄核は前方に移動し線維輪の前方に圧力が加わります。(図5左参照)

体幹の屈曲(前屈)では、椎間板の前方が押しつぶされ、髄核は後方に移動し線維輪の後方に圧力が加わります。(図5右参照)

椎間板への負荷は特に屈曲動作で強くなりますが、その屈曲動作を起こさせる筋肉のコリは腹筋(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋)です。

この腹筋群は腹圧と関係しており、腹圧が高ければギックリ腰を予防する力が働きます。

ですが、腹筋が弱い、または腹筋の柔軟性が低い人は、椎間板損傷のリスクが高いです。

腹筋の柔軟性の確認方法(うつ伏せ)

うつ伏せで背中を反らします。(写真1参照)

背骨や腹筋に柔軟性があると骨盤を床につけたまま、腰を反らせることができます。

写真:うつ伏せで背骨や腹筋の柔軟性を確認する方法。
写真1:背骨や腹筋の柔軟性の確認方法

また、以下の理由でも背骨を反らせない場合があります。

・腰椎の変形
・腰椎の骨格の歪み
・腹筋の柔軟性が不足
・背屈による痛みによる防御性収縮。

防御性収縮については、コチラの記事で書いています。

このような理由により、背屈中に骨盤が床より離れてしまいます。(写真2参照)

写真:背骨や腹筋の柔軟性不足の確認方法。
写真2:背骨や腹筋の柔軟性不足
腹筋の柔軟性や腹筋力の確認方法(立位)

立位でなるべく膝が曲がらないようにして背中を反らします。(写真3参照)

写真:立位で腹筋の強さと背骨の柔軟性の確認方法。
写真3:立位での背屈

腹筋が弱いと、代償作用で膝を曲げて対処しようとします。(写真4参照)

写真:立位で腹筋の強さと背骨の柔軟性不足。
写真4:立位での背屈不良

また、腹筋の弱化以外にもうつ伏せで上げた例が原因で背屈ができない場合もあります。

このような原因により、腰を反れないと椎間板の損傷リスクが高いため、日頃から腹筋を鍛えたり、腰を反らせる柔軟運動は大切です。

※脊柱管狭窄症と病院で診断された方は、腰を反らせると痛みが出ることが多いため、背屈運動は控えた方が良いです。

②経年による椎間板への負荷による損傷。

経年による椎間板への負荷による損傷は、椎間板に負荷になる事を何度も繰り返す事で起こります。

加齢により身長が低くなるのは、椎間板が損傷し薄くなっていく事が原因です。

その負荷は、急激な過負荷による損傷で紹介しましたが、特に椎間板への負荷が強くなる姿勢は、体幹が前屈する姿勢でした。

日常生活を例にすると、猫背姿勢がそうなる傾向にあります。

つまり、日常生活で以下の姿勢や動作を行う人ほど、椎間板を傷めるリスクが高くなります。

・猫背が強い人。
・体幹を前屈させる作業や動作。

猫背が椎間板にダメージを与える理由。

体幹の前屈(腰部の屈曲)姿勢を行うと椎間板は後方に膨らみます。

これは、椎間板の中にある髄核が後方に移動しようとする力が働く為です。(図5右参照)

詳しくは、コチラで説明しています。

腰部の屈曲を繰り返す動きや椎間板に強い負荷をかかる動作を何度も行うと線維輪の後方が徐々に破壊される事があります。

そして、椎間板の中央にあるべきの髄核が後方に移動しやすくなり、移動すれば椎間板の後方が膨らみます。

椎間板が後方に膨らんだ病態が椎間板ヘルニアと呼ばれます。(図6右下参照)

図:椎骨後方変位による腰椎ヘルニア
図6:椎間板の突出

ここで非常に重要なことがあるのですが、一度破壊された線維輪は修復される事がありません。

線維輪が損傷すると、その後の人生は劣化した状態で使うことになります。

ただし、椎間板には神経が通っておらず、もしくは極度に少なく、椎間板損傷による痛みは損傷に伴った周囲の炎症と言われています。

その為、椎間板は修復しなくても炎症が収まれば痛みは治まっていきます。

ですが、ヘルニアが重症化し、後方に膨らんだ椎間板が神経を圧迫すると下肢にシビレや痛み、内臓の機能低下がでる事があります。

線維輪の劣化は、このようなリスクが高くなる為、その後のケアが大切になってきます。

日頃から腰部のケアを行うことや負担をかける動作を減らす事がギックリ腰や椎間板ヘルニアのリスクを下げることになります。

椎間板損傷が原因のギックリ腰への整体施術。

椎間板には神経がない、または少ないために椎間板が損傷しても痛みは感じにくいと言われていますが、痛みが出た場合は周囲の炎症と言われています。

炎症を起こす組織は、以下のものがあります。

・後縦靭帯や関節包。
・腰椎抹消神経の神経根。

椎間板損傷が原因のギックリ腰への施術は、以下のことが大切と言えます。

・腰椎ヘルニア(突出)を抑えること。
・髄核の後方移動を元の位置に戻すこと。

ギックリ腰への整体施術は、筋肉の損傷によるギックリ腰への施術と違います。

痛みの原因が筋肉ではない為、筋肉に押圧を加えても痛みがでにくく、傷めた直後でもそれを正す施術が行えます。

施術方法

髄核の後方移動は、腰椎の屈曲により起こるため、髄核を前方に戻すには逆の伸展動作が必要です。(図5左参照)

また、髄核の後方移動は、共に腰椎の後方変位も生じやすく、それも同時に正す施術が必要です。

これらの改善のために当院では、特殊なベッドを用いています。

特殊なベッド(伸展)

当院の施術ベッドは、うつ伏せで寝た場合には体幹の伸展や屈曲、側屈がなるように変形させる事ができます。

写真5のベッドは、伸展用に変形させた状態です。

写真:可変ベッド。
写真5:可変ベッド。

また、腰椎の後方変位が起こるとそれを補正しようと筋肉が疲労し硬くなる為、その筋肉の施術も行っています。

実際にうつ伏せになると写真6の状態になり、この姿勢で整体を行ないます。

写真:可変ベッド(伸展)
写真6:可変ベッド(伸展)

後方変位矯正ベッド。

腰椎の後方変位は、猫背が主な原因です。

※後方変位が起きる理由は、「背骨の歪み方」の記事で説明しています。

腰椎の後方変位を元の位置に戻すには、腰椎に前方への力を加える矯正が必要です。

矯正方法はいくつかありますが、うるまカイロでは後方変位への矯正力の高いドロップベッドを主に用いています。(写真7参照)

写真:トムソンベッド(ドロップベッド)
写真7:トムソンベッド(ドロップベッド)

後方変位への矯正は、「カイロプラクティックの矯正」の記事で説明しています。

医師から「手術が必要」と言われる前に

ヘルニアが強くなるほど整体を受けても突出したヘルニアが治まりにくくなります。

その為、ヘルニアが強いほど整体を受けても痛みが改善しにくい、または改善しても元の痛みに戻りやすくなります。

整体で症状が良くならないほどのヘルニアの場合には、病院で行う外科手術での治療を行うしか手がなくなります。

背骨の手術は、背骨の中に脊髄神経が通っている為、手術時の脊髄損傷のリスクがあります。

また、整体を受けても、何をしても損傷した椎間板が修復される事はありません。

椎間板の損傷を抑えるには日頃からの姿勢を正すことや整体などのケアが大切になってきます。

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