痛みで悩んだら、痛みを知ろう。「痛みとは」

痛みとは

痛みとは、辞書で調べると

1:病気や傷などによる肉体的な苦しみ。

2:精神的な苦しみ。悩み。悲しみ。

とあります。

国際疼痛学会による痛み

参考:知っておきたい慢性痛みのホント

原文
An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage.

和訳
「(痛みは、)実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」

わかりやすく言えば、痛みは怪我や病気によるものだけでなく、心の状態も影響するということです。

また、痛みは体に異常があっても痛みを感じないことがあり、体に異常がある時にだけ痛みを感じているわけではない。

痛みを感じている人がいれば、病院で異常なしと言われても、その人は実際に痛みを感じており、痛みは「気のせい」ではない。

また、痛みを感じている人とそれを見聞きした人が想像する痛みは、異なります。

検査で異常なし

実際に、医療的な検査をしても異常がないということもあります。

X線画像:腰部
X線レントゲン画像

これはその検査ではわからないことや今の医学では判明していないことかもしれません。

また、検査をした方の専門外の分野ということもあります。

検査の例として、関節や筋肉の痛みがあり、病院で受診するとX線レントゲン検査を受けることがありますが、MRI検査を受けないとわからない情報があります。

痛みに影響する要素

痛みと言えば怪我や病気による痛みを想像しますが、痛みを感じる要素はそれだけではありません。

一見、痛みとは関係ない要素が痛みの原因になっていることがあります。

一般的な痛み

一般的な痛みは、専門用語で侵害性受容性疼痛と神経障害性疼痛という医療用語があります。

わかりやすい言葉にすると、以下のようになります。

①神経の損傷による痛み。

②病気や怪我による炎症で生じる発痛物質による痛み。

③痛みに関係する受容体や感覚に痛みの閾値を超える刺激が入ることでの痛み。

またこれら以外にも炎症反応(腫れや発熱)による2次的な痛みもあります。

③の痛みは、組織の損傷を含まない痛みも含まれます。

圧迫や牽引、熱などの刺激は、軽度であれば損傷を起こさず、刺激が強くなると痛みとして感じます。

以下の刺激は軽度であれば組織は損傷しませんが、刺激が強くなると組織が損傷します。

・皮膚を軽くつねった際に生じる痛み、

・入浴の際に熱く感じるお風呂に入った際の痛み

・アンモニアなどの刺激臭

・強い音や光による痛み。

痛みについての勘違い

痛みを考える際に誤解しがちですが、「痛み=体のどこかが壊れたサイン」ではありません。

強い痛みを経験した方や慢性的に続く痛みを持つ方は、このような痛みの捉え方をしていることがあります。

その場合、痛みをさらに強く感じたり、痛みの症状が消えずに、痛みが続くことがあります。

痛みとは関係なさそうな要素による痛み

以下は、痛みと関係なさそうな要素ですが、これらは痛みを強く感じたり、これら自体だけでも痛みを感じることがあります。

ストレス(精神的なストレス以外も含む)

・痛みに対しての捉え方。(上記の例や幼少期から学んでいる痛みの認識があります)

心が負の感情に偏っている。

・脳のエラー。(下記、日本腰痛学会による痛覚変調性疼痛の説明参照)

日本腰痛学会のサイトにある説明

参考:痛みの分類(日本腰痛学会)

痛みの発症は、神経や組織の損傷が知られていますが、それ意外にも痛覚変調性疼痛という痛みの分類があります。

痛覚変調性疼痛は、侵害受容性疼痛でいう「現場」に異常はなく、神経障害性疼痛の原因になる神経や脳の損傷が無いにもかかわらず,とにかく常に痛いという状態です.いきなり痛覚変調性疼痛が生じることは稀で,腰部脊柱管狭窄症など様々な痛みを引き起こす疾患が原因となって,過剰な安静による筋量低下や社会交流の乏しさによる脳の機能異常により合併して起こる現象です.簡単に説明をすると,「痛みを引き起こす行動が繰り返されることで,より痛みを感じやすく敏感になっている状態」「痛みを繰り返すことで,脳が痛みを学習し,痛みへのハードルが下がってしまうことで小さな痛みでもすぐに強い痛みと感じてしまう状態」です.腰部脊柱管狭窄症でいえば,仕事などで歩くことを回避できず痛みによる跛行が繰り返されることで,腰部脊柱管狭窄症それ自体の痛みに加え,痛覚変調性疼痛が上乗せされてしまい,うまく表現ができないけれどもほぼ毎日痛い,なという状況となります.治療薬としては侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛に使用する薬剤を使用しつつ,状況に応じて抗うつ薬であるデュロキセチンを使用することもあります.デュロキセチンはうつ病で痛みがあるから使用するということではなく,脳の中でセロトニン・ノルアドレナリンという物質を増やす作用で,下降性疼痛抑制系と呼ばれる脳の痛みのブレーキシステムを正常に戻すために使用します.しかしながら根本治療となることはなく,リハビリで体を動かしたり,認知行動療法と呼ばれる心理療法で痛みへの注意を逸らしたり,痛みの捉え方,対象行動を正すこと,社会参加を段階的に講じることで徐々に改善を目指していきます。

痛みを強く感じるタイプ

痛みは、このような事が影響しており、以下の状態にある人は痛みを強く感じやすいと言われています。

「病気、不眠、疲労の蓄積、精神疾患、孤独感や社会的地位の喪失。」

このような痛みを強く感じやすい体を医療的には「痛みの閾値が低下している状態」と言います。

痛みの閾値については、コチラ。

痛みの定義

日本疼痛学会がまとめた痛みの定義 (2020.7.25)。

「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、 あるいはそれに似た感覚かつ、情動の不快な体験」

「付記」

痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けます。

・痛みと侵害受容は異なる現象です。感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできません。

・個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。

・痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきです。

・痛みは、通常、適応的な役割を果たしますが、その一方で身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともあります。

・言葉による表出は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎません。

※コミュニケーションが不可能であることは,ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験 している可能性を否定するものではありません。

痛みへの対応

痛みは不快なものです。

それ自体がストレスとなり、放置するべきではなく、 できる限り早くあらゆる手段を使って和らげるべきです。

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