横隔膜呼吸(腹式・腹圧)で腰痛・肩こりを改善できる理由。

呼吸法で腹圧を高めて腰痛・肩こりを緩和させる。

腰痛や肩コリの原因は、

「姿勢が悪さ」

がありますが、それだけではありません。

※これから、まあまあの長さの説明が続きます。

説明読むのは面倒くさい方。

説明読むなんて

「めんどうくさくて読んでいられない。」

という方は、以下の記事でトレーニング方を説明しています。

腹圧を高めるトレーニングの記事はコチラ

腰痛・肩こり緩和の為の横隔膜呼吸は、コチラ。

腰痛や肩コリが生じる原因

原因には

①筋肉疲労。
②骨のズレ。
③ストレス。
④脳の誤作動。
⑤内臓疾患。

などがあります。

姿勢の悪さから影響を受けるものは①、②です。

ですが、その改善は仕事や生活環境により難しいのが現状です。

今回は、①、②の緩和につながり、普段の生活にちょい足しでる横隔膜(腹式・腹圧)呼吸について書きます。

補足

当院に来られたお客様の原因として考えられる順番は、統計をとったわけではないですが、

①→②→③→④→⑤

となっていると思います。

腹圧とは

腰痛・肩こりの改善方法の一つに腹圧が高まる横隔膜を使った呼吸法があります。

呼吸なので、立っていても、座っていても、寝ていてもできます。

ここで紹介する横隔膜呼吸では、腹圧がキーワードになります。

腹圧とは、腹腔内の圧力です。

これが高いと疲労や歪みを抑えきれます。

腹腔

腹腔(図1水色)は、横隔膜から下にある内臓が収まっている部分となります。

それらの内臓は、腹膜に収まっています。

図1:腹膜のイメージ

腹膜は、厚さは1mm以下で、その役割は、臓器を収納することと保護にあります。

つまり、腹腔は腹膜内のことになります。

腹圧の役割

腹圧とは、その腹腔内の圧力です。

腹腔内の圧力を高めることで排尿、排便、分娩を助けます。

また、身体の動きをサポートする役割もあります。

この腹膜と腹圧の仕組みは、風船と似ています。

膜(風船)が保護の役割だとしたら頼りないものです。

その為、実際には膜の周囲を筋肉が覆って外部からの衝撃を強化しています。

そして腹圧を高める呼吸には、その筋肉を有効活用することが必要不可欠です。

下図は、腹膜と隣接する腹横筋を一部取り除いた図ですが、腹部周囲の筋肉は、他にも多数あります。

腹膜周囲の筋肉

腹膜を覆っている筋肉は、図2のように、たくさんありますが、腹圧に大きく関係する筋肉は、

・腹筋
・骨盤底筋
・横隔膜

の3つです。

図2腹部周囲の筋肉(画像:解剖学カラーアトラス 第3版より)

赤色部分が筋肉で、以下が腹部周りの筋肉です。(カラーアトラス参考)

1:脊柱起立筋 
2:脊柱起立筋
3:胸腰筋膜
4:外腹斜筋
5:内腹斜筋
6:腹横筋
7:横筋筋膜
8:腹直筋鞘の後葉
9:腹直筋
10:腹直筋鞘の前葉

腹筋

腹部の筋肉

腹筋は、腹直筋というイメージが強いですが、実際には4種類の筋肉があります。

表層に外腹斜筋。

中層に内腹斜筋と腹直筋

下層に腹横筋

という筋肉があります。

腹筋というと、シックスバックのイメージが強く腹直筋をイメージしますが、

※シックスバック(下図:執筆者ではありません。)

腹部の脂肪が減り、腹直筋が鍛えられるとお腹の中央にある6つの筋腹が現れ、シックスバックと呼ばれます。

シックスバック

外腹斜筋は、下図の表層にある筋肉で、ウエスト周囲のお腹の前から後ろまで腹部全般を覆っています。

腹直筋は、外腹斜筋の中にあります。

図3:外腹斜筋

内腹斜筋は、外腹斜筋の下層にあり、外腹斜筋の筋線維と交わるようにあります。

外腹斜筋

外腹斜筋は腹直筋を覆っている筋肉です。

役割は、両側同時収縮で屈曲し、片側の収縮で側屈と回旋します。

内腹斜筋

内腹斜筋は外腹斜筋の下層にあり、腹直筋と同じ層にあります。

役割は、回旋時は外腹斜筋と逆の働きをしますが、側屈においては同じ働きをします。

これは、外腹斜筋と内腹斜筋の筋線維の向きが交差している為です。

両側同時収縮で屈曲させます。

腹直筋

腹直筋は、引き締まるとシックスパックと言われるように、体が絞れてくると腹筋が6分割されて見える筋肉です。

役割は、屈曲です。

腹横筋

腹横筋は、内腹斜筋と腹直筋の下層にあり、前屈とは関係ない筋肉です。

この筋肉の役割は、他の腹筋と一緒になって腹圧をかけて排便や排尿時、立位や座位での姿勢維持にかかわっています。

これらの腹筋が弱化すると姿勢維持を背部の筋肉に頼ることになり腰痛や肩コリが起きやすくなります。

腰痛や肩コリ予防の為にとても重要な筋肉です。

腹直筋の関連痛は、腰と骨盤の境目や肩甲骨より少し下の方にでてきます。

腹横筋⑨

腹横筋は、外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋の最下層にある筋肉です。

腹圧を高める呼吸では、この筋肉の活用が特に重要です。

図4腹横筋(正面)

下図5は、腹横筋と腹膜を除去した図になります。

図5腹横筋除去

おへそを引っ込めるようにお腹を凹ます働きは、この腹横筋が収縮しています。

骨盤底筋(腹膜下層の筋肉)

腹膜の下部は、骨盤という骨(仙骨、腸骨)でサポートされています。

また、排尿や排便、脚を効率よく動かすために骨盤の下は穴が開いてますが、骨盤低筋群(図6)によって塞がっています。

図6:骨盤底筋群

横隔膜

腹膜上部は横隔膜(図7)があり、今回紹介する呼吸は、この横隔膜を使った呼吸法です。

図7:横隔膜

呼吸による横隔膜の使われ方は、コチラ(上智大学サイト)が詳しく書かれていますので、ここでは省きます。

腹圧が高まるとき

通常、腹圧は意識しなくても自律神経によって維持されています。

ですが、意識して高めることもできます。

それは以下の時です。

①排尿、排便、分娩時。

②吸気時。

③動作時。

また、この腹圧が弱い人もいます。

①排尿、排便、分娩時

排尿、排便、分娩時には、それぞれの臓器(膀胱、直腸、子宮)の中のものが押し出されます。

押し出される仕組みは、風船の中の風船に働く圧力と同じです。

図8:腹圧の仕組み

上図8のようなサポートを受けています。

例:腹膜(水色の風船)、臓器(赤色の風船)とした場合。

物理的に外側の風船に外部から圧迫が加わると内部の風船にも圧迫が加わります。

例えばウンチ

日常的に行う排便で説明します。

便(ウンチ)は、直腸に収まっていますが、ウンチしたい時に肛門を緩めて、お腹に力を入れて腹圧が高まり、直腸に圧力が加わり便が出てきます。

腹部の筋肉が弱い人は、便秘になりやすいというのは、こういう理由です。

また、それぞれの臓器には、括約筋という出口を閉めたり緩めたりする筋肉があり、腹筋に力を入れただけでは中に入っているものはでない仕組みになっています。

なので、ただ腹筋に力を入れただけではウンコはでないので安心してください。

また、尿漏れという症状は、尿道括約筋に異常がでて、その筋肉が緩んだ時に起こります。

話しを戻し、腹膜の上層にある腹筋群が働いて腹膜に圧が加わると臓器の中にも圧が加わります。

膀胱に圧が加われば尿が排出されます。

陣痛が起きて赤ちゃんがでる準備ができた時に、子宮に圧が加われば赤ちゃんが生まれます。

②吸気時

普段なにげに呼吸を行っています。

横隔膜は呼吸で使われますが、人によってはあまり使わずに呼吸をしている場合もあります。

呼吸は大きくわけて腹式呼吸と胸式呼吸にわかれ、それぞれ使われる筋肉は異なるからです。

横隔膜は、この腹式呼吸で使われる筋肉です。

呼吸は、横隔膜だけを使って呼吸をしている訳ではありません。

どのような呼吸が使われているかは、コチラ(上智大学サイト)で詳しく書かれていました。

ここでは腹圧に大きくかかわる横隔膜についてのみ説明します。

横隔膜で行われる呼吸

呼吸は、呼気と吸気に分けられます。

呼気は、息を吐くことです。

息を吐く時には、図9左のように横隔膜が緩みドーム状の形になります。

吸気は、息を吸うことです。

吸気時に横隔膜が働き収縮し、ドーム状から図9右のように平っぺたくなります。

その際に横隔膜が押し下がった分、横隔膜の上部にある肺のスペースが広がるために空気が肺に入ります。

図9:呼吸と横隔膜による腹圧増加のしくみ
図9:横隔膜呼吸による腹圧増加のしくみ

腹圧がかかる仕組みは図8で腹膜に外部から圧力が加わると増加すると説明しました。

つまり、腹圧は吸気時に横隔膜が腹膜に圧力をかけて高まります。

③体を動かした時

この説明をする前に腹圧が高まらない時も話した方が理解しやすいので、先にそれを説明します。

腹圧が高まらないとき

腹圧が高まらない時、つまり腹圧が低い人とも言えます。

そのような人は、図10のように腹膜に外部から力が加わっても、腹膜が伸びて腹膜内部の体積が変わらない人です。

図10:腹圧が弱い人のお腹
腹圧が高まる要素

つまり、腹圧を高める要素は、2つあります。

①腹膜に外部から圧力が加わる。

②腹膜に外圧が加わった分、腹膜内の体積が小さくなる。

体を動かす時に腹圧が高くなるとは?

つまり、腹圧を高めるためには横隔膜以外の筋肉の役割が必要になってきます。

それは体を動かす時に使われる筋肉がサポートを行っています。

呼吸で使われる横隔膜以外にも、体の筋肉が使われると高まります。

腹圧と関係なさそうな腕や脚を動かす時も、腹圧は高くなります。

なぜなら腕や脚を効率よく動かすために、体幹の筋肉も使われるためです。

体幹とは、腕と足、頭を除いた胴体の部分のことで、臓器や腹膜が収まっている部分です。

腹圧が高まる時には2つの条件が必要でした。

①腹膜に外部から圧力が加わる。
②腹膜に外圧が加わった分、腹膜内の体積が小さくなる。

図10のように外部から腹膜に圧力が加わった分、腹膜伸びると腹圧は高くなりません。

図10:腹圧が弱い人のお腹

つまり、②の要素として、腹膜周囲にある体幹の筋肉が働いて腹膜が伸びるのを抑え込めると腹圧を高めることができます。

この②の要素がありつつ、横隔膜が使われる呼吸をすることで、腹膜への圧力が逃げずに腹圧は高まります。

さらに、お腹を凹ますように腹筋に力をいれると直接的に腹腔内の容積は小さくなり、さらに腹圧は増します。

うんこを無理やり出したい時には、自然とこのようにお腹を凹ませていますよ。

このような筋肉の働きを利用して、呼吸で腹圧を高めています。

腹圧の低下につながる筋肉。

腹圧を高めるために必要な筋肉の話をしました。

つまり、それらの筋肉が弱いと腹圧を高めることができません。

その筋肉の中で特に弱くなると腹圧に影響がでる筋肉があります。

それは腹筋群と骨盤底筋です。

横隔膜も大切ですが、横隔膜は呼吸筋で息を吐く時には緩む筋肉です。

横隔膜の上には心臓や肺があります。

また、それらの周囲は肋骨がサポートしています。

背中には背骨があるため圧力が逃げにくくなっています。

つまり、圧力が逃げやすい場所は、骨がない場所です。

それが腹部の前面と骨盤の底です。

腹部は腹筋で腹膜をサポートしています。

その筋肉が弱いと内臓の重みに負けて、骨がない腹の前がでてきます。

整体をしていて体の歪みは少ないけれど痛みが強いという方は、疲労が蓄積しすぎて痛覚が過敏になっているか、このような体型をしています。

骨盤の底は、穴が開いています。

弱くなりすぎるとこの穴から内臓が飛び出してくる骨盤臓器脱という病気になるくらいこの筋肉は緩んでしまいます。(後述)

腹圧を高めて腰痛や肩コリを和らげる。

最初に書いたように、腰痛や肩コリが起る理由はいくつかあります。

腹圧を高めて症状を緩和できるのは、以下の2つです。

①筋肉疲労
②骨のズレ。

①筋肉疲労

筋肉疲労というと肉体労働から起こると思いがちですが、それだけが原因ではありません。

姿勢が悪いとそれを正そうとしたり、バランスをとるために無意識のうちに筋肉が働きます。

姿勢不良があれば、寝ている時以外には、その筋肉が使われることになり、筋肉疲労を起こします。

それが腰痛や肩コリの主な根本的な原因です。

詳しくはコチラに書いてあります。

②骨のズレ

背骨がズレる原因は、背中を丸める行為にあります。

このようなズレから起こる歪みのことを後方変位といい、圧迫骨折や骨の変形が原因ではない側弯は、この後方変位のズレが大きくなるほど側弯も大きくなる傾向にあります。

詳しくはコチラに書いてあります。

腹圧増加は、なぜよいのか?

肩こり・腰痛を防ぐには、①筋肉疲労や②骨のズレが起きにくくすることが大切と言えます。

上半身の重みは、図11のような背骨の図を見た場合、背骨が支えていると思われがちです。

図11、背骨側面

支えるという言葉によって、硬いものをイメージしてしまうのでしょう。

ですが、実際には骨格に筋肉や内臓が下図左のようについています。

図1:腹膜

腹膜は、風船のようなものだと話しました。

上図右を見てイメージしてほしいのですが、側方から見た背骨は体の後ろ側に位置しています。

その為に頭や上半身の重みによって自然と腰からくの字に曲がりやすくなっています。

そこで、お腹の中に風船があれば、その風船に上半身の体重をあずけることができます。

肩こり・腰痛の主な原因は①筋肉疲労、②骨のズレにあると言いましたが、お腹の中の風船に上半身の重みをかけることができれば筋肉疲労を減らすことができます。

また、これから紹介する横隔膜を意識した呼吸は、腹部周囲の筋力アップになる。

筋肉が多いほど骨格に歪みがあっても補正する力は高くなり、骨のズレを抑えることにつながります。

そして、腹圧呼吸の方は、姿勢が悪いとやりづらいため、さらに予防に繋がります。

普段の生活でその筋肉を使った体の使い方やエクササイズが大切になってきます。

エクササイズは、以下の記事を参考にしてください。

腹圧を高めるトレーニングの記事はコチラ

腰痛・肩こり緩和の為の横隔膜呼吸は、コチラ。

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